トランスジェンダー当事者は、性自認(実感する性)と出生時に割り当てられた性とが一致せず性別違和感を持ちます。戸籍上の性別は、健康保険証、パスポート、住民票などを作るときの基本となっており、トランスジェンダー当事者が日常生活を送る上で大きな意味を持っています。
2003年、「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(平成15年7月16日法律第111号)」が成立し、2004年より、トランスジェンダー当事者のうち医療的な対応を求めて医療施設を受診する性同一性障害(性別不合と改称される予定)当事者の一部は戸籍上の性別変更が可能となりました。
現在、戸籍上の性別変更のためには、原則として以下の要件が求められています(第3条)。
1.18歳以上であること。
2.現に婚姻をしていないこと。
3.現に未成年の子がいないこと。
4.生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。
5.その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。
しかし、その要件の中には、性同一性障害当事者、あるいはトランスジェンダー当事者にとって必ずしも適切とは言えないもの、大きすぎる障壁となっているものも含まれています。戸籍の性別変更ができないことで、就労や医療施設への受診、結婚、子どもを持つことなど、社会生活上の困難を抱えている例も見られ、うつや不安症、自殺念慮を助長する要因にもなっています。
例えば、トランスジェンダー当事者の中には性別適合手術(生殖腺、すなわち精巣や卵巣の摘出)を希望しない人々も存在しており、手術をしないことで戸籍の性別変更ができない状況があります。これについて、2014年、WHO等の国連諸機関は「強制・強要された、または不本意な断種の廃絶を求める共同声明」を発表し、戸籍の性別変更の要件から性別適合手術を除くことを求めています。
一方、トランスジェンダー当事者、特に性同一性障害当事者の中には、身体への違和感から性別適合手術を強く望む人々も多く存在しています。しかし、診療拠点が少なく、遠方への通院を余儀なくされたり、自己判断で個人輸入した薬剤を使用した危険なホルモン療法を行ったりしている例もあります。また、手術療法は、2018年度から健康保険が適用されているもののホルモン療法には保険適用がなく、混合診療禁止の原則により、ほとんどの性別適合手術が自費診療のままとなっている現実があります。
トランスジェンダーに関連する法律と医療を考える会(プロジェクトTGD)は、これらの課題の解決に向けて活動します。
TGD、すなわちTransgender and gender diverse individualsとは、トランスジェンダー当事者や性別にとらわれない意識を持つジェンダー・ダイバースな人々のことであり、「出生時に割り当てられた性」を強いられることで苦痛を感じます。トランスジェンダーに関連する法律と医療を考える会(プロジェクトTGD)は、公的文書における不要な性別欄の削除、履歴書等の性別欄や写真の廃止や任意化、制服の選択制などの課題にも取り組み、「ジェンダー平等」の視点のもと、性別にかかわりなく、すべての人々が社会に参加し、権利や機会を享受できることを目指します。
ニュース
- 2024年04月01日
- Pride指標に示されている各種の取り組みに対する企業の賛同を集めております.
- 2023年02月28日
- トランスジェンダーに関連する法律と医療を考える会(プロジェクトTGD)のホームページを開設いたしました。