特例法の改正に関する活動

 日本において,公式に性同一性障害(性別不合)の診療が始まって以来,身体への違和感を軽減するためのホルモン療法や手術療法などが行われてきましたが,戸籍上の性別を変更することはできず,生活する上での違和感が解消されることがありませんでした.
 「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(性同一性障害特例法)」は,長らく私達が要望してきた戸籍上の性別変更を実現しました.2022年4月の性同一性障害特例法改正により,現時点での戸籍上の性別変更の要件は以下のようになっています.

 1. 18歳以上であること
 2. 現に婚姻をしていないこと
 3. 現に未成年の子がいないこと
 4. 生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること
 5. その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること

 しかし,トランスジェンダー当事者や性別にとらわれない意識を持つジェンダー・ダイバースな人々(TGD:Transgender and gender diverse individuals)の中には,戸籍上の性別変更を希望しているものの,このような法律の要件を満たすことができない方も多く存在しています.
例えば,「子なし要件」(現に未成年の子がいないこと)に関しては,「子どもがいなければ」を思う親や,「自分がいるから親が性別を変えられない」と思う子どもを生み出してしまう可能性があり問題があります.
 また,「手術要件」(生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること)に関しては,必ずしも手術を希望しない,あるいは医学的な理由でできない方もおられます.また,2014年にWHO(世界保健機関)などの国際諸機関はこのような要件を入れている国は外すべきであるという声明を出しています.
 性同一性障害(性別不合)の診療を行う医療スタッフや教育や法律の専門家,各種の分野における支援者,また,性同一性障害(性別不合)当事者を含むトランスジェンダー当事者や性別にとらわれない意識を持つジェンダー・ダイバースな人々(TGD:Transgender and gender diverse individuals)が会員となっているGID(性同一性障害)学会も,性同一性障害特例法改正に向けての提言を発出しています.
 このような状況下,トランスジェンダーに関連する法律と医療を考える会(プロジェクトTGD)は,性同一性障害特例法改正に向けての活動を行っています.

【資料】
◆性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律
http://www.okayama-u.ac.jp/user/jsgid/tokureihou_20220401.pdf

◆「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」の改正に向けた GID(性同一性障害)学会からの提言
                 2021年5月21日 GID(性同一性障害)学会 理事長 中塚幹也
http://www.okayama-u.ac.jp/user/jsgid/210521_seimei.pdf

◆GID(性同一性障害)学会は,国連諸機関による「強制・強要された,または非自発的な断種の廃絶を求める共同声明」を支持します.
                  2021年3月29日 GID(性同一性障害)学会理事長 中塚幹也
http://www.okayama-u.ac.jp/user/jsgid/210329_seimei_kokuren.pdf